はじめてデジタルで漫画を描くとき、
トーンの「線数」や「濃度」ってどうすればいいの?
印刷で綺麗に出る数値ってどれ?
みんなどのくらいにしてるの?
って気になるんじゃないかと思います。
そこで今回は
いろんな作家さんのアシスタントをしてきた中でよく使う線数&濃度などについて書いていきます。
目次
トーンとグレースケールの違い
まずはトーンとグレースケールの違いについて。
トーン
「トーン」は「スクリーントーン」の略で、
色々な模様や柄などがありますが、濃淡に使うこう言ったトーンは「網(アミ)トーン」と言います。
これは濃淡があるように見えますが実は白(透明)部分以外は全部「黒100%」で描画されていて、
網(点)の密度や大きさの差で濃さが違って見えます。
白の用紙に黒の点で表現しているので2色使って濃淡を表現しています。
拡大すると、白地部分と黒い部分があることがわかります。
点の大きさと密度で濃さが違って見えるのがわかりますね。
ちなみにトーンは「●線●%」と濃さを表します。
「60線10%」「60線20%」のように表し、線数は密度、%は丸の大きさと思ってください。
60線よりも50線の方が粒が大きく、ざらざらした見た目になります。20線くらいになるとただの水玉模様になり、90線になると粒が潰れて印刷によっては汚く見える可能性があります。
グレースケール
トーンが白と黒の二値画像なのに対し、
グレースケールは白~黒の間の灰色も表現できます。
それぞれ一色その色で塗りつぶされているので見た目がとてもなめらかです。
漫画ではどっちがいいの?
人それぞれ好みがあるので断言はできませんが、
様々なジャンルでアシスタントをしてきた私見で言うと
WEB漫画、ダウンロード・アプリ配信、男性向け同人誌だとグレースケール。
商業誌、女性向け同人誌はモノクロ二値(トーン)
で指示をもらうことが多いかなと感じています。
これは媒体がWEBメインなのか紙メインなのかというのが
大きく関わっていると思います。(男性向け同人誌のみちょっと違いますが)
グレースケールはディスプレイで見た時に映えやすく、
トーンは印刷された紙で見た時に映えやすいんですね。
ただこれらは「その形態ではそうやってる人が多い」というだけなので、
「自分が描くのは女性向け同人誌だけどグレースケールで塗りたいんだ!」って思ったら
それでいいと思います。
実際女性向けでもグレースケール増えてきてますしね!
どちらがいいか迷って、こだわりがない方は上記を参考にしてみてください。
トーンの数字の見方
クリスタでは、選択範囲ランチャーからトーンを貼ると
このようなウインドウが出てきます。
線数は点の密度、濃度は点の大きさです。
デフォルトでは角度は45度になっています。これがスタンダードです。
背景や模様などに意図があって角度を変えて使用したい場合は変えてもいいのですが、
普通に濃淡のために貼るのであれば45度のままで使用しましょう。
スタンダードな線数は60線~70線
60~65線が特によく使われている印象です。
商業だとほぼ60線。
B5同人誌だと60線か65線でアシスタントすることが多いです。
60~65線だと印刷でも綺麗に出て、かつ見た目も密集していて綺麗です。
また、雑誌サイズからコミックスサイズに縮小した時の違和感が少なく感じます。
55線以下だと点の密度が空きすぎて模様みたいに見える場合があるのと、
70線以上だと商業誌の印刷形態によっては網が細かくて印刷でつぶれてしまう場合があるので
意図的にそういった効果で使用する以外ではあまり使いません。
ただ同人誌や、最初からコミックス発行などの場合でA5サイズ以下で原稿を作成する場合は
60線だと網が大きく感じてしまうようで、そういった場合70線が使用されることがあります。
また、比較的若い世代の人は網が細かい方(グレースケールに近い見え方)がいいらしく、B5サイズでも70線を使用する人も増えてきています。
年齢が上の世代だとトーンの網感(60線)があった方が漫画っぽくていいと感じる人が多い印象なので(私もそうです)
ご自身の絵柄や好み、発表形態やターゲット層に合わせて60~70線で色々試してみてくださいね。
同人誌印刷ってめちゃくちゃ綺麗
雑誌にもよるので一概には言えませんが、
たとえば週刊少年誌と、同人誌(オフセット印刷)を見比べてもらうと
同人誌の方が印刷が綺麗なことがわかると思います。
上で70線はつぶれる可能性があると書きましたが、
同人誌印刷では80線でも綺麗に印刷してくれるところが多いです。(※アナログ原稿の場合は別)
オンデマンド印刷はオフセットより繊細さに欠けるものの、
現在のオンデマンド機だと60線程度ならオフセットと遜色なく綺麗に印刷されます。
コピー機の場合はメーカーや印刷方法(紙からやデータから直接など)によって左右されるので
色々ためしてみてくださいね。
線数の統一・使い分け
60線と決めたら、作品内で線数は全て統一するのがオススメです。
もちろん効果としてギャグシーンで30線を使ってみたり、
背景コマや服の模様などに50線を使ってみたりといったことは大丈夫なのですが、
例えば大きいコマは網の大きい60線で小さいコマは網が細かい65線を使うなど線数を混ぜていると、
管理ミスでモアレの原因になります。
違う線数のトーンを重ねるとモアレと言って印刷上の見た目が非常に悪くなります。
意図やこだわりがないのであれば線数を混ぜて使用するのはオススメしません。
クリスタでは最初の新規作成ページでデフォルトの線数が選べるようになっています。
この設定で作られた作品では、グラデトーンやランチャーから作れる網トーンの初期数値が
設定した線数になりますよ。(便利!)
肌の影トーン
肌の影トーンで多いのは濃度10%~20%です。
10%、15%、20%でアシスタントすることが多いですが、
その中でも一番多いのは10%です。
つまり60線10%が一番よく使われている影トーンということになります。
私も自分の同人原稿の影トーンは60線10%にしています。
日焼け・褐色肌のトーン濃度
ちょっと日焼けは5~8%
普通の日焼けは10%
がっつり日焼けは15%
それ以上は20%~25%
くらいが目安かなと思います。
モニタで貼った時は薄く感じても、印刷されたものを見ると濃かったり、
自宅プリンターでは良い感じに見えても印刷会社によって薄かったり濃かったり感じたりするので、
色々試してみてくださいね。
クリスタでトーンの重ね貼り、トーンの網をずらす・移動させるには
褐色肌に影トーンを貼る時など、
つまりトーンの上にもう一枚トーンを貼りたい時は
網をずらす必要があります。
レイヤープロパティの下の方、
網の位置という項目でXとY地点が選べるのでずらしていきましょう。
アナログだと、1枚目の点にやや重ねるように2枚目を張るのが主流でしたが、
デジタルだと均等にずらすよう指示されることもあるので
ずらし位置は人それぞれです。
一枚目の点に重ねてちょっとずらしたもの。
ベテラン作家さんはこのタイプの指示が多いです。
均等にずらしたもの。
まとめ
60線がスタンダード。
影トーンは60線10%が多い。
日焼け肌は10%前後が無難。
こんな感じでしょうか。
人それぞれ好みがあると思いますので、これらを基盤にいろいろ試してみて
自分好みの設定を見つけてみてくださいね!